179. 特殊な産業翻訳用語 / 体言と体言止めと

体言は品詞であり、体言止めは表現技法である。

体言止めというのは、たとえば「花は桜木、男は岩鬼」のように、文章を体言までで切って餘韻を残す表現技法のことである。ほかにも、「今朝は雨です。」の「です」を切り捨てて「今朝は雨。」のように体言で文章を終える場合も体言止めと呼ぶことがある。いずれにしても文章として必要な部分を切り捨てる表現技法である。

一方、和訳スタイルガイドによく「章タイトルは体言止めにすること」などと書いてあるが、これを真に受けて本当に体言止めにしてはならない。彼らが言っているのは単に全体としての品詞を名詞にせよということである。“Chapter 1. Processing Data”とあったら「第1章 データを処理」ではなく「第1章 データの処理」と訳せという意味である。

日本翻訳連盟の提案する日本語標準スタイルガイドの一部を下に示す。


 

彼らによれば「見出し」「箇条書き」「用字と用語の使い方」「商品名と型名」というのが体言止めらしいが、単に全体の品詞を名詞にしているだけであって体言止めではない。「本文は敬体」「箇条書きは体言止め」が体言止めである。