335. 「割に」と「割と」と

ずっと気になっていた。高橋聡先生は何かに拘泥しているのか「わりと」一本槍である。「辞書好きの割に」のように他に接続するときだけ「わりに」である。

 最近、ある上層の若い女性が、話のなかで、「わり」ということばをつかった。〈中略〉わたくしら、少なくとも明治から大正へかけて育った者には、だいたい、「わりあい(割合)」、「割合に」、「わり(割)に」、「わりかた(割り方)」の四語しか持合わさない。「わりと」は異様にひびくし、「わりかし、、」にいたっては、さらに異様だ。異様であることは同時に美しくないのだ。聴くに堪えないのである。〈中略〉いずれにせよ、「わりと」や「わりかし」は、まだ、、、普通の辞典には採録されないのである。これらの二語には、格がそなわっていないのだ。

稻垣達郎,(1967年3月),誤植でないことば,群像,第22巻,第3号

持っている字引のなかで一番新しいのが岩波国語辞典第7版(2009年)である。「わりと」は見出し語にない。